青春×水墨画の異彩! 第59回メフィスト賞受賞作 砥上裕將著『線は、僕を描く』

小説作品
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今回は第59回メフィスト賞を受賞し、週刊少年マガジンでも連載が決まった青春×水墨画小説『線は、僕を描く』を取り上げます!(^^)!

アルバイト先の展覧会場で水墨画の巨匠・篠田湖山(しのだこざん)と偶然出会い、なぜか気に入られた大学生・青山霜介(あおやまそうすけ)は弟子になることに。それに反発した湖山の孫である千瑛(ちあき)は、翌年の「湖山賞」をかけて霜介と勝負を宣言。こうして霜介は水墨画の世界に没頭することになるのです。

水墨画という「線」の芸術が、深い悲しみの中に生きる「僕」を救う。

『線は、僕を描く』作品情報

  • 作品名:線は、僕を描く
  • 著者名:砥上裕將
  • 出版社:講談社
  • ページ数:322ページ
  • 初版:2019年6月

著者紹介

水墨画家、小説家。

第59回メフィスト賞受賞作『線は、僕を描く』で小説家デビュー。

あらすじ

ここからは未読の方にも楽しめる簡単なあらすじを紹介します。

突然の弟子入り

出典元:O-DAN

両親を交通事故で失い、喪失感の中にあった大学生の青山霜介は、展示場でパネル運びのアルバイトを終えた後に、会場内で老人と知り合います。たくさんの水墨画が掛けられた展覧会場を老人と周り、老人に感想を聞かれては思いついたことを語りますが、その老人こそが超のつくほど有名な水墨画家・篠田湖山でした。

湖山は水墨画については素人の霜介を気に入り、その日から自分の弟子にすることを勝手に決めてしまうのです。

湖山賞に向けて

出典元:O-DAN

湖山の弟子入りを聞かされた霜介と偶然居合わせた湖山の孫である千瑛は、突如現れた霜介というライバルに戸惑いを隠せませんでしたが、やがて彼女の水墨画家としての闘争本能が湧き上がってきます。

そして、千瑛は霜介に翌年に開かれる水墨画家にとって大きな賞である湖山賞での勝負を宣言するのです。果たして二人の勝負の結末はどうなるのでしょうか。

感想

水墨画については素人の霜介が主人公であったために、同じく水墨画の世界を知らない読者も同じ位置からその世界に入れたのは、作品に没頭しやすい理由の一つに思えました。筆や墨、水墨画独特の技法習得の教えまでを作中で一つ一つ学ぶように読み進めていけます。まるで湖山の弟子に本当になっているかのようで、水墨画への関心が高まりました。そして、気づいた頃には目の前に水墨画の作品が目に浮かぶ不思議な錯覚に陥っていました。

水墨画のほかにも、霜介を囲む個性豊かな友人たちや、湖山門下の絵師たち、とりわけ湖山の孫である千瑛との関係は水墨画家としてのライバル関係だけでなく、ほのかに感じる恋の気配にも終始目を離せませんでしたそして、両親を失い、ひどい喪失感の中にあった霜介が水墨画に出会った前と後で変化していった姿も今作の魅力の一つです。こうした人物たちの描写は水墨画のことだけでなく、芸術の世界に没入する人間たちの群像劇として、作品の幅を広げていたように感じます。まさに瑞々しいタッチで描かれる水墨画のように、作中で描かれている人物たちの姿が鮮やかに映りました。

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